「子らにはさせまい この思い」

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平成25年度 全日本同和会 青年部研修会 意見発表 大阪府連 杉本 透

平成25年度 全日本同和会 青年部研修会 意見発表 大阪府連 杉本 透

さて、早速ではございますが、ご臨席の皆様方もご承知のことと思いますが、昨年10月の週刊朝日の記事において、橋下大阪市長の人格を完全否定し、また、部落差別と偏見を助長した差別事件が起こりました。

本日は、その差別事件に対して、大阪府連合会執行部並びに事務局をはじめ青年部としての取り組みと今後の方針を限られた時間内で、意見を述べさせていただきたいと思います。

本事件におきましては、法務省、大阪府人権室、大阪市市民局、堺市市民人権局同和行政課並びに公益財団法人人権教育啓発推進センターに対し、われわれ大阪府連から、7項目からなる公開質問状を提出しました。

これは週間朝日に対する抗議を示すものではなく、また、橋下市長個人の問題だけではなく、今後、二度とマスメディア関係者において、決して基本的人権が侵害されることのないよう警鐘を鳴らし、マスメディア関係者による自主的な取り組みはもちろんのこと、国及び地方自治体による人権教育・啓発の徹底化を図るためのものであります。

公開質問状の回答は、当府連発行の「あけぼの関西」に掲載いたしましたが、法務省、公益財団法人人権教育啓発推進センターに於いては、公共性並びに職務の必要性から回答は差し控えるとのことでした。また大阪府、大阪市並びに堺市に於いては回答を戴いたものの、望ましい回答ではなく、本問題に対するわれわれとの温度差を感じました。

回答の内容を要約して申し上げますと、記事自体は週刊朝日が認めた通り、不適切だとしながらも、教育・啓発は「人権教育・啓発推進法」に謳われている通り、今後もマスメディア関係者の自主的取り組みにより行うことを前提とし、特段の規定等を設けないとしています。

近時の人権教育・啓発の推進に当たっては、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画や人権擁護推進審議会の人権教育・啓発に関する答申等が、その根拠となっており、大阪府並びに大阪市、堺市の見解もこれに準じたものであると言えます。

しかし、現在、日本には新聞社・出版社・放送局等は多数、存在します。この度は、その中でも、日本を代表する新聞社を母体に持つ出版社が、正確で偏りのない報道に努めなければならないマスメディア関係者として、絶対に犯してはならない差別事件を起こしたことを顧みれば、本問題が如何に重要で今後の教育・啓発が必要であるかは言うまでもありません。

今後、マスメディア関係者において、基本的人権が侵害されることのないようにするためには「表現の自由や報道の自由」を踏まえた上で、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の一部改訂が不可欠であります。

では、この一部改定の必要性を述べさせていただきます。

「人権教育啓発推進法」に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定(策定)、平成23年4月1日閣議決定(変更))の第4章3項で「人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等」でマスメディア関係者を含む13の業種が掲げられています。その内容は次の通りです。

「人権教育・啓発の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等の取組が不可欠である。国連10年国内行動計画においては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者として、検察職員、矯正施設・更生保護関係職員等、入国管理関係職員、教員・社会教育関係職員、医療関係者、福祉関係職員、海上保安官、労働行政関係職員、消防職員、警察職員、自衛官、公務員、マスメディア関係者の13の業種に従事する者を掲げ、これらの者に対する研修等における人権教育・啓発の充実に努めるものとしている。これを受けて関係各府省庁の取組は今後とも充実させる方向で積極的に推進する必要がある。その際、例えば、研修プログラムや研修教材の充実を図ることなど望まれる。とありまた、議会関係者や裁判官等についても、立法府及び司法府において同様の取組があれば、行政府としての役割を踏まえつつも、情報の提供や講師の紹介等可能な限りの協力に努めるものとする。」

また、国連10年推進本部においては、「特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進」のマスメディア関係者に対しては、「人権問題に関してマスメディアが大きな影響力を有していることに鑑み、自主的取組が行われることを促す」としています。

大阪府においても、「人権教育・啓発に関する基本計画」の解釈は、マスメディアに従事する関係者において人権教育のための自主的取組が行われることを促す」としています。

人権教育・啓発の推進の要となっています前述の国内行動計画において、「マスメディアに従事する関係者において人権教育のための自主的取組が行われることを促す」とする部分が、週刊朝日同様の人権侵害事件をマスメディア関係者において、今後再発させる要因になる可能性は大きいと考えられます。

また、組織体制が整備されている週間朝日でさえ、重大な人権侵害事件を起こしたことに鑑みれば、「自主的取組が行われることを促す」だけでは不十分であることが、証明されたのではないかと考えます。

つきましては、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の一部改訂あるいは国において何らかの方策を講じていただきますよう、陳情もしくは請願していただきたいと切に願うとともに、われわれ大阪府連と致しましては、大阪府・大阪市・堺市の回答を受け、府連執行部の指導のもと、府連事務局と青年部で各担当部署と協議を重ね、自治体による国に対する陳情をしていただき、同計画の一部改訂がなされるよう働きかけて行く方針にあります。

これらを踏まえ考えますと、同和問題に対する国民の意識の変化は、特措法失効後の希薄化が如実に表れているものであるとみてとれます。だからこそ、今一度、国・地方自治体の同和問題に対する取り組みを強化する必要が不可欠であり、本問題の解決を早急に行う必要があります。

根本的な解決策としては、人権教育・啓発推進法に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」の各人権課題に対する取組として、女性・子ども・高齢者・障がい者・同和問題・アイヌの人々・外国人・HIV感染者・ハンセン病患者等、13の項目が挙げられていますが、これらの問題の解決策として、それぞれの問題をひとくくりとした「人権教育・啓発」を推進するのではなく、それぞれの教育・啓発が当然必要であり、更に制度等、整備の必要性を感じます。

例えば、交通事故の場合、被害者への対処を最優先に行うのは当たり前ですが、事故が起きた原因を分析し、加害者責任を追及するなどをせずに、被害が発生しやすい状態を放置すれば、当然また事故が起き、被害者が生まれます。

だからこそ事故の起こりにくい環境を作らなければなりません。部落差別では、本事件のような事象が公然と行われている中で、部落差別反対と言うだけでなく、悪質な差別を禁止し、あるいは規制する制度を設けなければ、教育・啓発だけでは不十分です。差別事象が起きた時にだけ、行政も取り組みますと言ったところで根本的な解決には至らず、そう言ったことを生み出しにくい社会の意識や制度を作っていかなければならないと考えると同時に、法律や施策の整備、及び強化と並び青少年の育成を通じて人間愛をともに学ぶことも大切であると考えます。

同和問題をはじめとするさまざまな人権問題の完全解決に向けて必要なこととして、教育・啓発にあると考えたとき、われわれ青年部では女性部と連携し幼少期を含めた青少年への教育・啓発を第一に考えます。

それは今後、日本を担う世代が全日本同和会のスローガンである「子らにはさせまいこの思い」を実現するためであり、そのため府連青年部では女性部並びに事務局とともに各々が地域コミュニティへの参画を果たし、また子育て世代にあってはPTAや子ども会等と連携協力し、青少年とともに教育・啓発を推進し、本問題の完全解決に向け鋭意努力しているところです。

われわれ青年部は、同和問題の早期完全解決を期すという強い信念のもと、松尾信悟・全国会長を中心に、田中孝志・全国青年部長の指導を仰ぎ、全日本同和会の機動力となり、青年部としての役割を認識し、各都道府県連との連帯感を深めるとともに、全国民的運動を展開していくことを、皆様方と共に誓いまして、大阪府連の意見発表とさせていただきます。

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