「子らにはさせまい この思い」

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平成25年度 全日本同和会 近畿地区連合会研修大会 会長あいさつ 全日本同和会近畿地区連合会会長 荒井 正記

本日は、平成二十五年度・全日本同和会近畿地区連合会 研修大会開催にあたり、ご多忙中のところ、ご来賓の皆様方には、ご臨席賜り、誠に厚く御礼申し上げます。また、平素は、ご指導並びにお力添えを賜り、衷心より重ねて感謝申し上げます。

一方、全日本同和会の崇高なる綱領のもと、同和問題の早期完全解決、すなわち人権社会の構築をめざして、共に運動に邁進しております、同志の皆様方に対しましては、心より敬意を表します。

また、本日、ご臨席いただいております行政並びに関係機関の皆様方におかれましても、同和問題早期完全解決に向けての鋭意努力に対しまして、高い所からではございますが、改めて心より敬意を表します。

さて、われわれ全日本同和会は、日本国憲法の精神並びに国同対審答申の精神に則り『同和問題はヒューマニズムの問題であり、民主主義最大の課題である』という認識のもと、『対話と協調』により、全国民的運動と成すよう、地区内外の人間が集結し、運動に邁進しております。

この全国民的運動となし得るために、当会は、属地・属人主義を採っておらず、綱領、指導者心得、規約を遵守し、運動に参画される方であれば、入会することができます。

さて、当会の指導者心得は、公民的資質を高めることでもあると言えます。

「公民的資質とは、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者、すなわち市民・国民として行動する上で必要とされる資質を意味している。したがって、公民的資質は、民主的、平和的な国家・社会の形成者としての自覚をもち、自他の人格を互いに尊重し合うこと、社会的義務や責任を果たそうとすること、社会生活の様々な場面で多面的に考えたり、公正に判断したりすることなどの態度や能力であると考えられる」。

これは、「小学校 学習指導要領 解説社会編」の公民的資質の解説の一部ですが、正しく、人としてのモラルであります。

ヒューマンライツは、「人権」として訳されていることが殆どですが、私は、人権と言うよりも「人として正しいこと」であると捉えています。やはり部落差別をはじめとするさまざまな差別を解消するには、個々人の意識、つまり、人として正しい意識、知識、意志、判断、行動が大切であります。

この公民的資質を高めていかなければならない立場にあるのは、われわれ運動団体は当然のことですが、行政やマスメディア関係者、法曹関係者、議員の先生方等の人権に大きくかかわる人は、より一層高めなければならないと考えます。

また、部落差別の解決には、市民の公民的資質の基礎を育てる取組が家庭・学校教育・社会教育において、一層、求められると思いますので、ご臨席いただいております皆様方にもご尽力いただきたいと切に願います。

最後になりましたが、われわれは、部落差別が現存する限り、これ以上、人間の尊厳を不当に踏みにじる社会を形成させない、という強い信念を持って、今後一層、運動に邁進致す所存でございますので、皆様方のご助言、お力添えを、今後一層賜りますよう、心よりお願い致しまして、私のあいさつとさせていただきます。本日は、ご臨席賜り、誠にありがとうございました。

平成25年度 全日本同和会 女性部研修会 意見発表 和歌山県連 天野 夕里子

先日、違和感をもつ事柄が、政府の世論調査の対象になっていることを知りました。

それは、「家族の法律制度に関する世論調査」というもので、次のような質問と回答結果が掲載されていました。

夫以外の男性、または妻以外の女性との間にうまれた子、いわゆる婚外子について、 法律制度の面で、「不利益な取り扱いをしてはならない」と回答した人は60.8%「ある面において不利益があってもやむを得ない」と回答した人は15.4%居ました。

続いて、婚外子が相続できる金額を、嫡出子の半分としている民法についての質問には、「変えない方がよい」と回答した人は35.6%「同じにすべきである」と回答した人は25.8%でした。

婚外子に法律制度の面で不利益な取り扱いをすべきでないと回答した人が 60.8%もいるのに対して、婚外子の相続分が嫡出子の半分しかないということについては、同じにすべきだ、と回答した人は25.8%しかいませんでした。

婚外子の相続分が嫡出子の半分というのは、婚外子にとっては、明らかに不利益で不当な扱いです。

1993年国連規約人権委員会にある、婚外子差別の法制度撤廃勧告委員会は日本に対して、「委員会は婚外子に対する差別的な法制度に特に憂慮している。特に、出生届と戸籍に関わる法文・慣行は規約17条と26条に違反している。 婚外子の相続権に関する差別は、規約26条に違反している」と指摘しています。  そして、「婚外子に対する日本の法制度を改正し、そこに含まれている差別的条項を削除し、本規約の第2、24と26条に適合するよう勧告する。日本に依然存在し続ける、差別的な法規と慣行は廃止されるべきである。日本政府はこの問題について、世論に方向付けを与えるよう努力すべきである」と勧告しています。

次に、1998年国連子どもの権利委員会は日本に対する総括所見において、「公的書類において婚外子の出生が記載されることを、とりわけ懸念する」「婚外子に対して現在存在している差別を是正するための立法措置がとられなければならない」と、このように、国連規約人権委員会や子どもの権利委員会は、婚外子の相続分が嫡出子の半分である旨を定めた日本の法律、民法900条4号が、国際人権規約に違反する差別であるとして、それを是正することを日本に何度も勧告しています

法律が誰かに不利益を課すには、大前提となる考え方があり、それは、「個人は自己の行為にのみ責任を負う」という原則。個人責任の原則です。

この場合の婚外子の受ける不利益というのは、婚姻届を出さなかった、または出せなかった、親の都合や選択肢の一つであって、子ども自身の行為の結果ではありません。

自分が行ったことの結果でもない不利益が、なぜ、親にではなくその子どもにかかってくるのか、疑問を感じます。

正しく、全日本同和会の、親が子を思う人間愛を基調とした「子らにはさせまい この思い」に通じるものであり、このスローガンは部落差別だけではなく、すべての差別問題に通じるものだと感じています。

ご承知のとおり、先般、婚外子差別撤廃に向けた画期的な最高裁判決がでました。過去幾度となく最高裁で争われた非嫡出子の相続権が、嫡出子の半分であることの是非が今回は満場一致で違憲と認められました。

しかし、差別は財産分与に関してだけではありません。戸籍や住民票、社会的地位、いじめ、就職、…様々な問題があります。

その中で先日10月1日より兵庫県明石市に於いて全国で初めて嫡出子、非嫡出子の区別のない出生届の様式が運用されました。

地方自治体行政に於いて人権に配慮した素晴らしい試みでありましたが、その2日後の10月3日には神戸地方法務局より「法律、法令違反」と指摘され、翌4日には法務大臣が違法と結論付け、遺憾の意を表明しました。また、神戸地方法務局、局長名で是正勧告を行ったことも発表されました。

人権より現行の法律が大事であると大臣がはっきりと言い切ったのです。

確かに法令順守は当たり前のことですが、国の人権意識の稚拙さが見て取れます。

国連や他国からの人権問題の是正勧告を先延ばしにし、国内の議論まで先延ばしにし、地方行政の人権に配慮した行政施策を阻害し、どのようにして人権尊重の国づくり、町づくりができるのでしょうか?

この問題だけを見ましても、日本に於ける人権行政が世界から遅れていることは、はっきりとしています。国連憲章、世界人権宣言等に批准した真に人権が尊重される国になるには、私たちの更なる運動が必要不可欠だと思います。

また、子どもたちの問題のみならず、私たち母親の方にも母子、寡婦の問題があります。婚姻届のあるパートナーを亡くしたとき寡婦として手厚く制度が整備されているにも関わらず、婚姻届の無いパートナーをなくした時には只の母子として扱われます。しかもそれは私たち親だけの不利益ではなく、子どもにもそれは伴います。

これらの差別は、時の権力者に都合のいいように作られた法律で、日本に昔からある風習・伝統、その家のしきたりや習慣とも言える、長男が家督を継ぐといった、家制度や家意識は、未だ根強く残っています。

結婚式に「○○家と○○家の婚儀」と掲げられていることや、「○○家の墓」というように、個々の幸せや尊厳よりも、家や墓を守ることを主軸とした風習がごく当たり前のようにあります。

この家制度がまさに部落差別に直結するものであり、良家に出生した人は家柄がよく、部落民の子として出生した人は部落民であると脈々と継がれて行く 社会が未だ現存します。家柄、門地によって個人を見られることもなく、ひとくくりにされ個人の尊厳もないがしろにされている事実があるのです。

私たちは、多くの方が普段なにげなく受け入れている偏見や因習、固定観念、穢れ意識等を常に問い直す努力や歴史を学ぶことが必要であり、何事にも関心を持ち、理解を深め、関わっていくことの大切さをあらゆる人と共に学び、すべての人権問題・差別問題はひと事ではなく、自分自身の問題でもあると認識し、運動に取組んでいます。

私たち県連女性部は、すべての人が、「子らにはさせまい この思い」の気持ちを活かしていけるような運動を展開して、日常生活を送ることができれば、同和問題をはじめとするさまざまな人権問題の早期完全解決につながるものと信じ、差別のない社会になると強く感じます。

同和問題をはじめ、さまざまな差別問題、人権問題を通して私たち女性部が強く思うところは、日本国憲法が保障する基本的人権とは、差別を受けてきた人々が中心となって、長年にわたり自由獲得の努力や運動をしてきた成果であって、この権利は、過去いくつもの試練に耐え、日本に居住するすべての人々に対して、決して侵すことの出来ない永久の権利として信託されたものであります。

したがってこれを踏みにじろうとする差別に対しては、人間としての誇りを持ち、未来ある子どもたちを守り、相手が誰であろうと決して許さない勇気を持つことが大切であると考えます。

最後になりましたが、私たち和歌山県連女性部は今後もより一層、全日本同和会女性部だからこそできる役割を認識し、中村県連会長、事務局の指導のもと、各県連女性部の方々と協力・連携し、松尾全国会長、中村女性部長のもと全国民的運動を展開していくことを皆様方と共に誓いまして、和歌山県連の意見発表とさせていただきます。

平成25年度 全日本同和会 青年部研修会 意見発表 大阪府連 杉本 透

さて、早速ではございますが、ご臨席の皆様方もご承知のことと思いますが、昨年10月の週刊朝日の記事において、橋下大阪市長の人格を完全否定し、また、部落差別と偏見を助長した差別事件が起こりました。

本日は、その差別事件に対して、大阪府連合会執行部並びに事務局をはじめ青年部としての取り組みと今後の方針を限られた時間内で、意見を述べさせていただきたいと思います。

本事件におきましては、法務省、大阪府人権室、大阪市市民局、堺市市民人権局同和行政課並びに公益財団法人人権教育啓発推進センターに対し、われわれ大阪府連から、7項目からなる公開質問状を提出しました。

これは週間朝日に対する抗議を示すものではなく、また、橋下市長個人の問題だけではなく、今後、二度とマスメディア関係者において、決して基本的人権が侵害されることのないよう警鐘を鳴らし、マスメディア関係者による自主的な取り組みはもちろんのこと、国及び地方自治体による人権教育・啓発の徹底化を図るためのものであります。

公開質問状の回答は、当府連発行の「あけぼの関西」に掲載いたしましたが、法務省、公益財団法人人権教育啓発推進センターに於いては、公共性並びに職務の必要性から回答は差し控えるとのことでした。また大阪府、大阪市並びに堺市に於いては回答を戴いたものの、望ましい回答ではなく、本問題に対するわれわれとの温度差を感じました。

回答の内容を要約して申し上げますと、記事自体は週刊朝日が認めた通り、不適切だとしながらも、教育・啓発は「人権教育・啓発推進法」に謳われている通り、今後もマスメディア関係者の自主的取り組みにより行うことを前提とし、特段の規定等を設けないとしています。

近時の人権教育・啓発の推進に当たっては、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画や人権擁護推進審議会の人権教育・啓発に関する答申等が、その根拠となっており、大阪府並びに大阪市、堺市の見解もこれに準じたものであると言えます。

しかし、現在、日本には新聞社・出版社・放送局等は多数、存在します。この度は、その中でも、日本を代表する新聞社を母体に持つ出版社が、正確で偏りのない報道に努めなければならないマスメディア関係者として、絶対に犯してはならない差別事件を起こしたことを顧みれば、本問題が如何に重要で今後の教育・啓発が必要であるかは言うまでもありません。

今後、マスメディア関係者において、基本的人権が侵害されることのないようにするためには「表現の自由や報道の自由」を踏まえた上で、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の一部改訂が不可欠であります。

では、この一部改定の必要性を述べさせていただきます。

「人権教育啓発推進法」に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定(策定)、平成23年4月1日閣議決定(変更))の第4章3項で「人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等」でマスメディア関係者を含む13の業種が掲げられています。その内容は次の通りです。

「人権教育・啓発の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等の取組が不可欠である。国連10年国内行動計画においては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者として、検察職員、矯正施設・更生保護関係職員等、入国管理関係職員、教員・社会教育関係職員、医療関係者、福祉関係職員、海上保安官、労働行政関係職員、消防職員、警察職員、自衛官、公務員、マスメディア関係者の13の業種に従事する者を掲げ、これらの者に対する研修等における人権教育・啓発の充実に努めるものとしている。これを受けて関係各府省庁の取組は今後とも充実させる方向で積極的に推進する必要がある。その際、例えば、研修プログラムや研修教材の充実を図ることなど望まれる。とありまた、議会関係者や裁判官等についても、立法府及び司法府において同様の取組があれば、行政府としての役割を踏まえつつも、情報の提供や講師の紹介等可能な限りの協力に努めるものとする。」

また、国連10年推進本部においては、「特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進」のマスメディア関係者に対しては、「人権問題に関してマスメディアが大きな影響力を有していることに鑑み、自主的取組が行われることを促す」としています。

大阪府においても、「人権教育・啓発に関する基本計画」の解釈は、マスメディアに従事する関係者において人権教育のための自主的取組が行われることを促す」としています。

人権教育・啓発の推進の要となっています前述の国内行動計画において、「マスメディアに従事する関係者において人権教育のための自主的取組が行われることを促す」とする部分が、週刊朝日同様の人権侵害事件をマスメディア関係者において、今後再発させる要因になる可能性は大きいと考えられます。

また、組織体制が整備されている週間朝日でさえ、重大な人権侵害事件を起こしたことに鑑みれば、「自主的取組が行われることを促す」だけでは不十分であることが、証明されたのではないかと考えます。

つきましては、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の一部改訂あるいは国において何らかの方策を講じていただきますよう、陳情もしくは請願していただきたいと切に願うとともに、われわれ大阪府連と致しましては、大阪府・大阪市・堺市の回答を受け、府連執行部の指導のもと、府連事務局と青年部で各担当部署と協議を重ね、自治体による国に対する陳情をしていただき、同計画の一部改訂がなされるよう働きかけて行く方針にあります。

これらを踏まえ考えますと、同和問題に対する国民の意識の変化は、特措法失効後の希薄化が如実に表れているものであるとみてとれます。だからこそ、今一度、国・地方自治体の同和問題に対する取り組みを強化する必要が不可欠であり、本問題の解決を早急に行う必要があります。

根本的な解決策としては、人権教育・啓発推進法に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」の各人権課題に対する取組として、女性・子ども・高齢者・障がい者・同和問題・アイヌの人々・外国人・HIV感染者・ハンセン病患者等、13の項目が挙げられていますが、これらの問題の解決策として、それぞれの問題をひとくくりとした「人権教育・啓発」を推進するのではなく、それぞれの教育・啓発が当然必要であり、更に制度等、整備の必要性を感じます。

例えば、交通事故の場合、被害者への対処を最優先に行うのは当たり前ですが、事故が起きた原因を分析し、加害者責任を追及するなどをせずに、被害が発生しやすい状態を放置すれば、当然また事故が起き、被害者が生まれます。

だからこそ事故の起こりにくい環境を作らなければなりません。部落差別では、本事件のような事象が公然と行われている中で、部落差別反対と言うだけでなく、悪質な差別を禁止し、あるいは規制する制度を設けなければ、教育・啓発だけでは不十分です。差別事象が起きた時にだけ、行政も取り組みますと言ったところで根本的な解決には至らず、そう言ったことを生み出しにくい社会の意識や制度を作っていかなければならないと考えると同時に、法律や施策の整備、及び強化と並び青少年の育成を通じて人間愛をともに学ぶことも大切であると考えます。

同和問題をはじめとするさまざまな人権問題の完全解決に向けて必要なこととして、教育・啓発にあると考えたとき、われわれ青年部では女性部と連携し幼少期を含めた青少年への教育・啓発を第一に考えます。

それは今後、日本を担う世代が全日本同和会のスローガンである「子らにはさせまいこの思い」を実現するためであり、そのため府連青年部では女性部並びに事務局とともに各々が地域コミュニティへの参画を果たし、また子育て世代にあってはPTAや子ども会等と連携協力し、青少年とともに教育・啓発を推進し、本問題の完全解決に向け鋭意努力しているところです。

われわれ青年部は、同和問題の早期完全解決を期すという強い信念のもと、松尾信悟・全国会長を中心に、田中孝志・全国青年部長の指導を仰ぎ、全日本同和会の機動力となり、青年部としての役割を認識し、各都道府県連との連帯感を深めるとともに、全国民的運動を展開していくことを、皆様方と共に誓いまして、大阪府連の意見発表とさせていただきます。